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ユマニチュードという考え方

関係先の介護スタッフさんとお話している中で教えていただいた「ユマニチュード入門」という本。
ユマニチュードって?
気になったので書店で探してみると、「ユマニチュード入門」の隣に「ユマニチュードと看護」が置いてあったのでそちらを購入。

ユマニチュードは、人間を意味する「human」と性質や状態を意味する接尾語の「~tude」から作られた言葉です。
認知症ケアの新しい技法として注目されていますが、
もともとは体育学の教師をしていたイヴ・ジネストさんとマレスコッティさんによって誕生した思想哲学で、
2014年にイヴジネストさんが来日講演を行った事で日本で広がっていったようです。

さて、言葉のように人間を人間たらしめるものは何なのでしょうか。
「誕生は二度あります。」2014年の講演でイヴさんはこんな話をしてくれました。

一度目の誕生は言うまでもなく生物学的な誕生。
二度目の誕生は社会的な誕生。
周囲の人間が見つめ、話しかけ、優しく触れる事で、赤ちゃんは自身が仲間として迎えられた人間であると認識していきます。

対照的に病院で拘束をされ、目を閉じたままうめき声を挙げているお年寄り。
それは、上記のようなユマニチュードの状態に置かれなくなってしまった結果です。
「あなたは私たちにとって大切な存在です」
そう伝え続ける事をユマニチュードの思想ではとても大切にしています。

そして、個人的にとても良いと思ったのが、具体的に技術が明文化されているという事です。
この事により、たとえうまく行かずに患者さんから強烈な拒否にあったとしても自分自身が否定されたと捉えなくてよくなります。
そして例えば入浴介助をする際に「3分以内に合意を得られなければ一旦諦める」というルールがあります。
「お邪魔しました。少ししたら、また来ますね」
と言って出直す。
そうすると、しつこい声かけで相手を怒らせてしまって「嫌な人」という記憶が残る、という事態が避けられる。
何となく、納得できる説明でした。

認知症ケアに必要なのは適正ではなく技術である、と明言されている事で働く側の精神的な負担も軽くでき、
実際に導入した介護施設での離職率も低下したというデータがあるそうです。

どうしても抵抗のぬぐえない「科学的介護」についての可能性も本書から発見する事ができました。
大切にしている①見つめる②話しかける③触れる
について、それぞれ時間を計測して見える化するという取り組みも行っているのです。
それによると、ある看護師はユマニチュード研修を受ける前後で口腔ケアの最中、アイコンタクトの時間が13秒から301秒に19.5倍に増加したそうです。

その数字が全てとは思いませんが、少なくともケアを改善するための客観的な指標の一つとしては有効なのではないかと思います。
客観的に示される事により管理者やリーダーからも指摘がしやすくなりますし、指摘を受ける側も単純に「技術」の修正として受け入れやすくなるのではないでしょうか。

全然紹介しきれていませんが、具体的なエピソードも豊富でとても魅力的な一冊でした。
調べてみたところ日本ユマニチュード学会さんでオンラインの研修なんかもやられているようなので、
本を読んで興味が湧いた方には良いかもしれませんね。

教えていただいたスタッフさんに感謝です!

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