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W社の是正勧告の件

高齢者へお弁当を配達している宅食事業者W社が労働基準監督署から是正勧告を受けた。営業所に勤める女性が1か月に175時間もの残業をしていたと主張。上司にあたる人物が勤務記録を改ざんしていたというニュースであった。

色々と思うところはあるが、今回は1点だけ。どこまでが「残業」なのか明確にされていなかったのだろうという点。今回のW社の場合は勤務記録の改ざんという事で弁解の余地もないが、本来労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できるもの」である。

ところがそもそも遠隔地で責任者として勤務している社員は、これが曖昧になりがちだ。指示された業務を遂行するために必要なものかどうか、これを精査しないままにしていれば会社側は反論できない。

例えば、販促用チラシについて会社から用意されたフォーマットはあるものの、良かれと思って地域に特化したチラシを作る、という仕事。業務時間内に行ってくれるのであれば評価に値するだろうが、このチラシを1枚作るために苦手なパソコンとにらめっこして30時間の残業をしました、と言われたらどうだろう?日々きちんと上司が業務管理をしていれば、「気持ちは嬉しいけれど、イメージを伝えて事務の人にお願いしてみよう」と1時間で仕上がっていたかもしれない。

介護事業所、特に小規模の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所、通所介護や放課後等デイなどでこれに近いケースは起こり得ると思う。まじめな管理者さんほど、勉強会を毎月開催するための準備に大変な時間を使ったり、ご利用者やご家族からの電話に夜中まで対応したり、本人の責任感で「勝手に指揮命令下」におかれる仕事量がどんどん増えていってしまう。

これを防ぐためには、会社が残業のルールを明確にし、上司に事前申告を行ってもらい、その上司が業務内容を日々確認するという地道な方法しかないと私は思う。日々の業務の中でどこまでを「指揮命令」として依頼している事なのかを明確にする。そして実際に業務上の無駄・無理で所定労働時間内の勤務が困難であれば人材配置やその仕組みを変えていかなければならない。

W社の場合には上司にあたる人物がこの役割を果たせなかった。というよりは、会社からのメッセージとして「残業は罪」としか伝わっていなかったのだろう。

こういったニュースが福祉業界から無くなるよう、自分にできる事を考えてこれから実践していこうと思う。

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