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110番のEさん(前半)

高齢者介護施設の複数拠点マネージャーだった頃に起こった事件のお話です。
(個人情報の保護のため一部事実を脚色しています。)

ある日、事業所の管理者M君から連絡がありました。
M君「新しいご利用者が決まりました」
萌「良かったね!いつからご利用?」
M君「それが、急遽で今日からとりあえず泊まりたいそうです」

詳しく聞くと、ご相談があったのはご本人Eさんのケアマネジャーから。
一人暮らしだったが認知症が進行し、家に帰れなくなることが増えて施設入所を考えていたが今朝また帰れなくなっているところを保護されてしまった。入所までの間利用したいとの内容でした。
当時は日中のデイサービスに加えて保険外事業で緊急時や短期間の宿泊サービスも提供していました。

そこまではよくある話だったのですが、
M君「困った事がありまして。身寄りがないんですよね。」

通常だとご家族の連絡先を頂き、契約も連名にしていただく事になっていました。しかし今回これ以上一人暮らしは不可能なEさんを受け入れないという選択肢は無い、と判断し受け入れを指示しました。

思えばこの時に情報収集が不足していた事が悔やまれます。

当のEさんご本人は大変穏やかなご様子で、新聞を眺めたり職員と将棋を指したりと問題なさそうです、というのが当日昼間の連絡でした。

夕方になり、状況が一変します。
管理者のM君から連絡が入りました。
「Eさんがご自身の携帯で110番して、今事業所に警察が来ています」

状況が全く飲み込めませんでしたが現場に急行しました。

現場についてスタッフから話を聞くと、誘拐されたと思ったEさんが突然中庭に飛び降りようとしたので危ないとスタッフが静止したところ、
Eさんは「このままだと殺される」と思ってトイレに行く振りをして110番した。という事でした。

警察の方と話した事で落ち着かれたご様子のEさんは静止したスタッフに対しては「あいつが俺を」と睨んでいたものの、他のスタッフに対してはにこやかにお話されていました。
ケアマネジャーにも報告を入れましたが「行くところが無い」と言われそのまま夜間も受け入れる事になりました。

当日の夜勤担当はある程度経験のある男性スタッフだった事もあり、Eさんが夕食を完食されるのを見届けて「何かあったら連絡してね」と私も事業所を後にしました。
まさか本当に何かがあるとも思わずに。

長くなってしまったので後半に続きます。

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