前半がまだの方はこちら。
さて、結局大吉さんにも会えないし、多分病院も行けていないし、
あの息子さんがちゃんとご飯や排せつのお世話をしているとも思えないし、
とにかく大吉さんが心配な私。
ケアマネジャーに連絡がつかないので、取り急ぎ市役所の介護保険課に連絡して事情を説明した。
担当者は親身に話を聞いてくれ、対応を検討すると言って電話を終えた。
その約1時間後、デイサービスの電話が鳴った。
ケアマネ「ちょっと、どういう事?なんで市に通報なんかしたの!?」
酷くお怒りの様子だったが、私にはなんで怒っているのか理解できていない。
ケアマネ「私を飛ばして市に通報なんてされたら、私が何も動いていなかったみたいじゃない!それに、あの息子さんとちょっとずつ関係性を作ってるところだったのよ!台無しよ!」
実はケアマネは、大吉さんが安全に過ごせるように少しずつ息子さんに対応を取っていたという。
そしてこうも言われた。
「あんなに乱暴で口の悪い息子さんだけど、今まで一緒に住んでるんだし、大吉さんだって頼りにしてるんだよ。それに、こうなったのは息子さんだけが悪いわけじゃない。今までの大吉さんにも問題があったんだよ。あなたのした事は今までの大吉さんも無視している。」
そう言われてはっとした。
今どういった状況で、どういう方向性で進んでいるのか、その前提情報が無いままに乱暴なふるまいだけを見た私は何なら息子さんを「大吉さんの敵」くらいに認識してしまっていた。傍から見たら乱暴な息子さんでも、大吉さんにとってはかけがえのない大切な息子だったのかもしれない。
もちろんご本人が危険にさらされるような場合には迷わずに通報すべきで、今回私にはそう思えたので市に連絡をした事は間違っていたとは思っていない。
ただ、そうなる前にもっと配慮できただろうとも思う。
息子さんに対して『大吉さんの敵』という先入観が無ければ、もっと話していれば、結果が違っていたのかもしれない。
結局、市役所から連絡が入った地域包括支援センターの職員さんが訪問してその時は大吉さんの体調も持ち直したものの、その後しばらくして入院し、そのまま施設へ入所する流れになったようだ。
そのケアマネジャーの怒りは収まらず、半ば強引に大吉さんの利用は中止となりそれ以降私の働いていたデイサービスと関わりは無くなった。
何ともやり切れない想いが残る結末だった。
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当時は私も心配から焦っていたし、ケアマネジャーに対しても腹が立っていたのですが、後々私の青さもなんだかなぁと思えるようになってきました。
当時のあの瞬間に戻ったらきっとまた市役所に通報する自信はあるのですが(笑)、あの瞬間のその前段階で食い止められていたかもしれないと思うのです。
合わないと思う人(息子さん)でも、最初から拒絶するんじゃなくて分かり合おうとする努力!
人間関係は鏡のようなものだから、苦手と思えば相手からもそう思われる。
その人が積み重ねてきたものが、その人の今いる場所を作っていく。
その積み重ねてきた軌跡を丁寧に見る事を、大吉さんと息子さんから学んだような気がします。