最近こんな話を聞きました。
「20才の友人が飲食店の店長をやっているんだけど、働きすぎてアルバイトの方が時給が良い事に気づいて辞めたいって言ってる」
普通に聞いたら「?」ですが、これって本当に良くある話。
店長だから、責任者だから、残業代は払わない。だって月に23万円も払ってあげてるじゃない。
それでも疑問を持たずに犠牲になるのは社会に出たばかりの若者。
おそらく確信犯であろう規模の会社だったため、即刻辞めた方が良いとアドバイスしました。
労働基準法上の「管理監督者」とは、あくまで「経営者と一体的な立場にある者」を差します。そしてその場合には労働時間等に関する規定の適用除外者となりますので残業代を支払わなくても違法になりません。
しかし、勤務シフトに入っていて出退勤を管理されている時点で(たとえ自身がシフト作成をしていようとも)管理監督者とは言えないのです。
更に言えば、もし出退勤の自由が認められていても、時給換算でアルバイトの子と同等以下の場合にはこれも管理監督者性が否定されます。
今回のように管理監督者だから残業申請すらさせないという事はもう論外ですが、そうでなくても残業申請をすれば残業代は支払われるけれども、空気を読んで残業申請をしないという店長さんや管理者さんはいらっしゃるのではないでしょうか。
自身も介護施設の管理者時代には、ほとんど住み着いたように事業所にいた時期があります。
でもそれは、決して仕事をするためではなく自身の経験不足を補うためにご利用者の情報確認や服薬、疾病について調べるためでした。
労働とは「使用者の指揮命令下に置かれた時間」となっていますが、例えばこの情報確認の時間についても、それを評価対象にされるされないという事があれば「残業時間」とされたかもしれません。
このあたりの線引きが難しく、居なければならないのであればそれは労働ですが会社から求められていない事を勝手にして残業代を請求されたら社長さんだってたまりません。
上司が声をかけ、残業の内容を確認してすべきか否かの判断をしたり、事前に申請してもらったりと実態把握をする必要があります。
中には重要性の低い報告書を書くために残業している事もあります。
そんなものは口頭で済ませたり、上司が現地確認をすればよいだけの話です。
残業をする場合には事前申請を、と就業規則に書いてあるからうちは大丈夫、という会社さん。
それが形骸化しているようなら認められない可能性があります。
定期的にアナウンスをしたり個別指導をするなどして、更にそれを記録に残しておく事で初めて意味を持つのです。
何か問題が起こった時にはあくまで「実態的に」どうだったのかが重視されます。
と書きながらも、リスクヘッジのためではなく積極的な成長のためにコミュニケーションが取れている会社ではそんな問題は起こらないんだよなぁと本心では思っています。
残業が恒常的に発生していたとして、それをその上司や経営者が把握しているかどうか。そしてそれを改善しようとしているかどうか。
もちろんその会社の置かれているフェーズによっては「今が頑張り時」という事もあるでしょう。
その時にもきちんと負荷をかけている店長や責任者と向き合って、一緒に未来を考えていれば、大きな問題になる事はありません。
なんとか改善しようとしている、意見を聞いてくれている、把握しようとしてくれているという様子が無ければ、残念ながら過酷な環境は今だけで終わりません。
そしてサービス残業をし続ける事で体や心に無理をして働き続けると自分が大変なだけでなく、会社も店長や責任者が無理をしないと回らない体制へ傾いていってしまいます。
会社のためにも残業は正確に申告し、それに対して向き合わずに圧力をかけるような会社であれば見切りをつけて次に向かいましょう。
これだけ個人が発信力を持っている時代で、人を大切に育てる仕組みを作っていけない企業は間違いなく淘汰されるはずです。
私も人を大切にする会社さんにだけお役に立てるよう、今後も努力を続けていこうと思っています。