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シャーデンフロイデ

脳科学者の中野信子先生の本にはまっています。
図書館で借りたり、書店で購入したり、既に5冊目を読み終えすっかりファンになりました。

中野信子先生はテレビのバラエティ番組などでも活躍されているのでご存知の方も多いかと思います。「脳科学」とは、私なりに要約すると「人間って結局脳内の化学物質によって行動を決められているんだよ」ということで、そんなとんでもない脳内の仕組みを解き明かしていく学問です。

日本人は自分の意見を言わない事を美徳としている、などと言われる事があります。そのために少し目立った行いをすると集中攻撃にあってしまうという例が後を絶ちません。

例えば、映画『えんとつ町のプペル』では作者の西野さんが新しい事に挑戦しようとしたら日本中から攻撃されたという事実が元になっていて、その映画が今ヒットしています。
つまり、そういう事ってあるよね、と実感している人が多数存在するわけです。

じゃあ日本人が協調性が高く、異端を攻撃してしまう傾向があるのはなんでなの?という理由を、中野先生は色々な方向からご説明されているのですが、私が面白いなぁと思った理由はこれです。

日本には昔から災害が多かったから。

地球上にある総陸地面積のうち、日本が占める割合は0.28%しか無いのに、全世界におけるマグニチュード6以上の地震の内およそ2割が日本で起きている事実。
こんな地域で生き延びていくのは不利に決まっている、と思いきや、日本は経済大国と呼ばれるまでに発展しました。

災害の被害を最小限に止める工夫、災害からの復興、これらは多くの人が協力しないとできません。一人の天才の活躍よりも、多くの人が集団として団結しなければ生き延びる事が難しい環境にあった日本では、集団を重視する性質が選択的に残されてきたのではないかと中野先生は考察しています。

そして「セロトニントランスポーター」と呼ばれる物質の密度を調べた研究についても書かれていました。
「セロトニントランスポーター」とは不安を感じにくくするセロトニンを再利用するための働きをするタンパク質だそうです。(ちょっと難しいのでなんとなくで書いてます。)
これは遺伝的に決まる側面が大きいとされているのですが、S型(ショート型、不安を感じやすい)と、L型(ロング型、不安を感じにくい)の2種類の組み合わせで構成されています。
SS、SL、LLと3つの組み合わせがあるのですが、日本人はS型(不安を感じやすい)を持つ人の割合が世界で一番高く、保有率は日本人が約8割、アメリカ人が約5割、南アフリカ人が約3割となっています。

つまり、日本人は不安になりやすい性質を遺伝的に残すことで目立つことを避け集団利益を優先して生き延びてきた民族であるという事です。

その結果、現代で何が起こっているかというと、自身の生命よりも会社を優先してしまう働きすぎ、という現象です。
「カロウシ」という言葉は日本人が命を削って働いていた事を象徴する国際語になっているそうです。英語の辞書にも「karoshi」と載っていますが、英語圏では命を削って働くなどという概念が存在しないために日本語がそのまま輸出されています。

つまりはじめに述べたように日本社会が「出る杭は打たれる」ようになったのは、環境に適応して集団を守ろうとした生存戦略の結果と言えるのかも知れません。

私は人を「日本人だから」とか「女性だから」とか「A型だから」とか分類して決めつける事は好きではありませんが、日本人には協調性を大事にするあまり自分を押し殺してしまう傾向があるという事は頭の片隅に置いておいた方がよいでしょう。
その上で、働くスタッフには良い方向にその特性を生かしてもらう一方で、個人に我慢を強いる事の無いように十分に個別の意見にも耳を傾けていく必要がありそうです。

今回は、感情という自分でもコントロールしきれない厄介で大事なモノについて解説してくれる中野先生の著書のご紹介でした。
マネジメントにも大いに生かせそうです!

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