『科学的介護情報システム』なんていう言葉が昨年あたりから聞こえてきていました。
この辺、できれば触れたくないと思っていたのですが、とうとうそうもいかなくなってきたようです。
例えば医療業界では多数の症例や臨床結果等を記録し分析結果を論文等に残し、業界で共有することにより積み上げたエビデンスがあり、それらを患者に示すことができています。
この手術は成功率が〇%だとか、平均余命は〇年だとか、この薬を飲む事による副作用の出現率は〇%だが高血圧の人は〇%に跳ね上がるので他の薬にしよう、だとか。
ところが介護業界ではそういったものがありませんでした。
どのような介護サービスを提供しているかは各事業所によって異なり、そのサービス内容にどのくらいの効果があるものか、どのくらいのリスクがあるものかという根拠や客観的情報が不足しているため、利用者は使用したいサービスを比較し、自ら判断し選択することが難しい状況が続いていました。
そこで昨年から厚生労働省が本腰を入れ始めたのが介護サービスのエビデンスを集めるデータベース「CHASE」(チェイス)です。
あれ?最初と名前違ってるじゃん?とお気づきの方、さすがです。
実はもう一つ2018年から存在していた通所リハビリ、訪問リハビリのデータベース「VISIT」と、この「CHASE」を二つ合わせて令和3年度より「LIFE」と呼ぶことに決まったのです。
ややこしい。。。
でももう今からは「LIFE」(ライフ)だけ覚えれば乗り切れそうです。
で、4月からこのLIFEを利用する事が要件となる科学的介護推進体制加算が新設される事に決まりました。
具体的に例えば通所介護では、LIFEに情報を提供し、またLIFEからのフィードバックを活用する事でご利用者1名あたり月に40単位(約400円・地域差有)が加算されます。
たかが400円と思われるかもしれませんが、介護保険でそれぞれ料金が決められている中での上乗せになる加算は事業者にとって大切なものです。
特に今回の加算については既に記録等を介護システムに入力している事業者にとっては特に負担が大きくかかる事もなさそうです。
あとは加算取得のための申請書類や実績報告手順が複雑でないと良いのですが。
近い将来、「週に1度買い物に行く事で平均〇か月自立歩行可能期間が伸びます」とか、「週に2回カラオケを歌う事で嚥下機能が平均〇年低下しません」とか、そんなメニューの中からもサービスを選べるような時代が来るかもしれませんね。
余談ですが、介護を題材にしたTBSのドラマ「俺の家の話」を見てみました。
その中でデイサービスに行ってはみたものの、俺は周りの年寄りとは違うと、やる気が出なかったお父さん。
担当スタッフが戸田恵梨香さんに変わったとたんにクララのようにに立ち上がり、周囲をどよめかせていました。笑
実際にこういう事って良くある話だと思うんです。
何か活動をした事に対しての評価だけでなく、どういった時に活動に取り組めたのかの部分も、特に認知症介護には重要な視点だと思います。
この辺もデータが蓄積されていくともっと面白くなりそうだと思っています。
スタッフが美男美女だと活動率が上がるという結果だけだと絶望しますが、そうではなくて、例えば水分補給の量やタイミングだったりとか、お風呂の後なのか前なのかとか、排せつの状況だとか。
ベテラン介護職員が自然にやっている事や何となく感じている事が数値化できたら面白いなあと。
人と人でしか分かり合えない事やできない事はたくさんあるけど、テクノロジーに頼りデータを参考にする事でもっと介護職員が働きやすく、もっと高齢者が快適に過ごせるような未来が少しずつ近づいてきているなと。
以前ご紹介したabaの宇井さんを思い出しました。
最初から上手くはいかないと思いますが、介護のエビデンス集めとその活用を見据えた『LIFE』。
どんな障害があるのか、どうやって改善していくのかも含め、個人的にはとても楽しみにしています。