久しぶりにデイサービスで管理者として働いていた頃の想い出を書いてみようと思います。
なお、いつものごとく個人情報保護のため脚色しております。悪しからず。
私が管理者になったばかりの頃、求人広告を見て面接の応募がありました。
面接当日、やってきたのはぶかぶかのズボン(死語?)を腰で履いた、金髪の、でもまだ子どもみたいなかわいい顔をした18歳の男の子M君でした。
持ってきた履歴書を出してもらうと、
学歴は高校中退。職歴なし。資格は普通免許のみ。
でも志望動機欄には「カイゴの仕事がしたいです」と大きな文字で力強く書いてありました。
話を聞いてみると、複雑な家庭環境で育ち、なるべくして不良の仲間入り。
いつまでもこんなことしてたらダメだ!と一念発起して、悪い友達から離れるためにも地元を出て東京で働きたいんです、との事。
何もできないけど、家族の中で唯一おばあちゃんだけが優しくて大好きだったから、おじいちゃんおばあちゃんのお世話をする「カイゴ」がしたいと思っています。って話すんです。
こんな話を聞いて、断るはずもなく即採用しました。
勤務が始まってからというもの、ご利用者人気がすごくて笑。
ある日、介助中のトイレから「萌さ~ん!助けてくださ~い」とM君の声。
近くに行ってみると、大人の色気でM君を誘惑しているOさん(90才)のちょっとかすれたセクシーな声。そっとその場を離れました。
というのは冗談。ちゃんと助けに入り、Oさんに文句を言われながらも同性介助にさせていただきました。
但し、社会人経験のない18才を採用するというのはそれなりに覚悟がいります。まだ未熟な私なりに、いろんなケースを想定して保護者のような気持ちで受け入れたのを覚えています。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、M君はマイペースでたまに寝坊をしたり、彼女と喧嘩をして仕事が上の空になったり、叱られつつも皆に愛されて成長していきました。
人材育成、というとすごく大変な事をしているようですが、本当はそのスタッフを一人の人として尊重して見守り、良いところは認めて、悪いところは指摘するという当たり前の事を当たり前にしていけば良いのだと思っています。
先日娘の小学校入学説明会に行ってきたのですがその中で校長先生が「全員が全部で100点でなくて良いんです。まずは何か一つ、自信がつくとその自信が他のものにも展開していきます。」というような事をおっしゃっていました。
これはもう、そのまま人材育成の話だなぁと思いながら聞いていたのですが、そのあと「子どもの可能性を信じて伸ばすためにこの学校の先生はいるんです」と続き、立ち上がって拍手をしたい気持ちを抑えるのが大変でした笑。
さてM君はその後、多くのご利用者と関わり、可愛がられたり、時には拒否されたり、悲しい別れがあったりと色んな経験を積み、一回りも二回りも成長してから色んな事情で地元へと帰っていきました。
その後今では介護福祉士の資格を取得して地元の介護施設に勤務しているそうです。あの「介護」の漢字も書けなかったM君が介護福祉士。
そこに至るまでにきっとたくさんの経験と努力があったんだろうなぁと想像してしまいます。
生きていると色んな事があって、悩む事も、大変な事も、もしかしたら大事な人から大事にされない事もあるかもしれないけど、今も近くで見守ってくれている人がいるはず。
卑屈になったりしないで、胸を張って介護を楽しみ続けてほしいと、そんな風に自称元保護者は思っています。