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ツンデレのA子さん

私がデイサービスの管理者だった頃、ご利用開始までが一番強烈だった方のお話です。
仮名が思いつかなくなってきたので、A子さん。
勉強させていただきました!(一部脚色しています)

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ある日、何名かご利用者様を紹介してくれているケアマネジャーさんから一本の電話。

ケアマネジャー「ねぇ、今って空きあるかなぁ?ちょっと相談なんだけど・・・」
萌「ありますよ!ぜひぜひ~。」
ケアマネジャー「いや、あのね、う~~ん、ま、一回、一回会ってみてくれない?ダメならダメで良いからさ!」

新規のご相談という事で、張り切ってご自宅に伺った。
キーパーソンは娘さん。
ご自宅で小売業を営んでいるが、お母さんの認知症が進行して商売の妨げになって困っているという。

お母さん(ご本人)はお部屋にいるというので、お邪魔する。

娘さん「ちょっと待っててくださいね」
と、おひとりでお母さんのお部屋へ入室。ごそごそ。

娘さん「あ、大丈夫そうですのでどうぞ」
萌「お邪魔します!初めまして!」

すると、小柄なおばあちゃまがベッドの中からこちらを見ていた。
と、目が合った次の瞬間がばっと起き上がり。

A子さん「誰だぁ~~~~!!!!!何しにきたぁ~~~~~!!」

とベッドから飛び降りて杖を探す。
娘さんが一足早く杖を奪い、
「あ、ダメでした!一旦部屋から出てください!」

萌「え!あ、はい!」

娘さん「お母さん、お客さん来るよって言ってたじゃない!」
A子さん「聞いてない!ありゃ泥棒じゃ!勝手に入ってきた!」
ドタン、バタン、ガッチャン!!!

どうしてよいか分からず、しばらく待っていると娘さんが出てきた。
娘さん「あぁ、来てもらったのに本当にすみません、ダメですよね。」

ここで下がったら女がすたる!
萌「いえ、大丈夫ですよ、ちょっとお母さんと二人にしてもらっても良いですか?」

失礼します!と、ふすまを開けて入る。
A子さん「また来たか!泥棒が!」
色々と投げつけてくるが、私からは近寄らず、じっと待ってみる事にした。

飛んできた物はまずまくら、それからリモコン、そして、霧吹きを持っておそるおそる私の近くまで来て、シュッシュと水をかける。

その後、投げる物が無くなって、今だと、話を始めようとしたその時。A子さんの目に閃きが浮かび、次に口を大きく開いたのが見えた。

一瞬のスキをついて飛んできたのは

入れ歯。

初めてでしたね。人から外したての入れ歯を投げつけられたのは。笑。

でもまぁ、何だかんだしたら落ち着いてこられて、もうこれはこのまま行っちゃおうという事になり娘さんと一緒にそのままデイサービスに見学に来てもらいました。

車中はもうスゴイ騒ぎで、
「泥棒が人さらいになったぞ~~~!!たすけてくれぇ~~い!!」

娘さんは慣れた様子で特に慌てる様子もなく、
「こういう感じで、今までのデイサービスにも通えなくなっちゃって。」

と淡々とご説明される。

「あと、汁物は少し冷めてから本人に渡してください。家でもたまにかけられますから、本人は良いけどスタッフさんがやけどしないように。」

あ、は、はい!

デイサービスに何とか着いて、内心ヒヤヒヤだった私の心配をよそに室内には娘さんに続いてスムーズに入室。

さて、これからが正念場、と思ったその時。

A子さん「まぁ~~むぅ~~~しぃぃ~~~~~!!」
と、まさに黄色い声を上げられた。

え?とA子さんの視線の先をたどるとベテラン男性スタッフMさんの姿。

A子さん「まむしじゃないかぁ~。こんなところで会えるなんてねぇ。」

え?Mさん、まさかの知り合い?いや、違うか。

娘さん「あぁ、多分、毒蝮三太夫(どくまむしさんだゆう)さんの事ですね。いつもラジオ聞いてるんで。」

Mさん、まぁ、何となくがっちりしてるし?ちょっと似てなくもないって言えばそうだけど・・・。

A子さん「まむしぃ、聞いてくれよぉ、さっき変な女にさらわれたんだよぉ~」

結局、Mさんを毒蝮三太夫として(?)大変気に入っていただき、
そのままご契約、ご利用の流れになったとさ。

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結局、何が言いたかったかと言うと、私じゃダメだったという事です(笑)

A子さんの場合にはスタッフMさんがいなければ多分ご利用に至っていなかったと思います。

どんな人でも先入観を持たずにちゃんと向き合っていく事は大切だと前回書いておきながら何ですが、人間同士、どうしてもだめな時もあります。

そんな時、やっぱり色んなスタッフがいる事は救いでした。
性別も年齢も性格も、いろんなスタッフがいたからこそ、対応の幅も広がったのでしょう。

100人中の100人に好かれる人なんていないから、皆で足りないところを補い合いながらチームになっていけると良いんじゃないかなぁと思わせてくれたA子さんとの出会いのエピソードでした。

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