人事制度や人材育成といったキーワードには人並み以上には敏感なつもりでいます。その中で、やたらと目にするようになった会社名「サイボウズ」。
サイボウズと言えば、以前いた介護の会社でもサイボウズ社のソフト「ガルーン」を使ってスケジュール共有や決裁ルートの管理をしていた事もあり、「IT系のイケイケの会社」という印象しかありませんでした。
ところが社労士の仕事を初めてからというものサイボウズ社の名前を見ない日が無い。本業の仕事の中身もさることながら、先進的な人事制度を取り入れている会社として非常に注目されているという事が分かってきました。
でもIT業界の話じゃなぁ。難しいカタカナ多いだろうし。と積極的に学びたいとまでは思わなかった私。
そんなある日、近所の書店に入ったら目に飛び込んできた「おすすめNo.1ビジネス書!」のポップ。ビジネス書も売れなくなってきているはずの昨今、サイボウズ社の取締役山田さんの書籍でした。
ネットやセミナーだけでなく、私の好きな書店でも注目されているとなると、もう手を出さないでいるのも限界です。
という事で、読んでみました。
「マネジャーにすべてを背負わせるのはもうやめよう。最軽量のマネジメント サイボウズ取締役山田理」
そこには、「合理的なITシステム構築による人材育成」みたいな話は一ミリも無く、どちらかというと山田さんの汗臭いベンチャー時代の話や、その後陥る幾多の失敗談、そこから立ち直るための泥臭い行動について書かれていました。
私も介護職員、生活相談員、管理者ときて、その後数年間マネジャーとして働いた事があります。
一緒に働くマネジャーの中には色んなタイプの人がいましたが共通しているのは皆現場たたき上げのメンバーだったという事。全員が現場のスタッフ、管理者を経験して実力をつけ、マネジャーとして複数拠点を担当していました。
私も含め、現場たたき上げのマネジャー陣は、人に頼る事が苦手な傾向がありました。他の管理者よりも仕事面で優れた結果を出したことでマネジャーに昇格したのですから、管理者ができる事はできないと恥ずかしいと思ってしまいます。
頼る事ができるのは、マネジャー同士か上司だけ。
抜擢されたんだから、期待に応えないといけない。現場で起こったすべての問題を自分が解決しないといけない。会社から求められる数字を達成させるために営業にも出ないといけない。現場の残業を減らすために自分がシフトを代わろうか・・・。
まさに「マネジャーがすべてを背負っている」という状態だったのかもしれません。
とは言え当時は急成長中の組織の中で、自分がこの会社を支えているんだというプライドが働き甲斐に変換されていたという状態でしたのでそれが負担だとか辛いとか、そんな風に感じた事もありませんでした。
ところがその後、娘を生んで育児休暇を取得し、復帰した私を待っていたのはかつて仲間だったマネジャー達の疲弊しきった顔でした。
会社の急成長は頭打ちを迎え、社内の空気は重く、数字が伸びないその責任を両肩と背中に背負ったマネジャー達の姿はあまりにも悲惨でした。
何人かに退職の相談をされ、引き留める事もしないで見送りました。
上手くいっているときは、すべてを背負ってもそれがエネルギーになります。
でも、会社も人生も良い時ばかりじゃない。
だったら最初から、一部の人にだけ背負わせるのはやめてみよう。
最軽量のマネジメントを読んで、すごく分かりやすいと思ったキーワードをご紹介したいと思います。
マネジャーに必要なのは、「清水の舞台から飛び降りる」勇気ではなく「清水の舞台から飛び降りるのは怖いと言える」勇気。
「一緒に考えてくれ」と言える勇気。
著者の山田取締役が会社の窮地で取った行動は「カリスマ的リーダーをあきらめて、全社員と雑談した」というもの。
まさに、私が推奨している「月1面談」と同じではありませんか!
管理者やマネジャーと介護スタッフが面談の場を持ちそこで認めて感謝するプロセスを経て信頼関係が構築されていくと、個々のメンバーの意思が見えるようになってきます。
そうすると初めて、個々の強みを生かして事業所目標や会社理念の達成に向かうという強いチームが作れるようになるのです!ね、山田さん!
と、何となく自分のやりたい事を肯定してもらったような気がしてすっかりサイボウズさんのファンになってしまいました。
もちろん、社員に共有するスピード感だとか、「働き方宣言制度」だとか、他にもたくさんマネしたくなるような取り組みが書いてあります。
管理職として悩んでいる方必見の一冊だと思います。是非!