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成年後見制度に関する研修会

千葉県社労士会主催の成年後見制度に関する研修会に参加してきました。
「成年後見制度」については昨年の研修会に参加した際に記載していましたのでこちらでご確認ください。

前半は長年葛飾区議会議員を務められた社労士でもある上原先生が講義をしてくださいました。
上原先生は東大市民後見人養成講座で学ばれ、第一回の東京都社労士成年後見人養成講座を受講されています。
その後実際に数名の方との契約を結び、後見人としてもお仕事をなさっているそうです。

後見人制度が始まった2000年、後見人のうち約92%が配偶者や子をはじめとする親族で、
親族で適任者がいないごく少数が弁護士等の専門家に依頼していました。
それが2020年には親族の割合が約20%まで減少し、70%近くを弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家が占めています。

この背景には、親族のうちの一人が受任することによりトラブルが起きたり負担が大きかったりということがあったそうです。

具体的な例として認知症になった方の子どものうちの一人が後見人となったとします。
成年後見人は本人の財産の管理を行うことから、他の兄弟から「お母さんのお金を使い込んでいるのではないか?」と疑われたり、場合によっては本当に使ってしまったりということがありました。
また、親族であるがために客観的な判断が難しくなり、実際には入院から戻ってこれる見込みもないのに、
自宅をバリアフリーにするための改装費用にお金を使ってしまう、というような事例もあったそうです。

介護でも同じことが言えますが、家族であるが故の難しさがあったということなのでしょう。
仕事として受任していれば、例えば泥棒扱いされたとしても「認知症の症状だから仕方ない」と割り切れますが、
これが献身的に介護をしている実の母親から言われると耐えきれない、ということもあります。

法定後見の申し立ては4親等以内の親族が行うことができます。
そのため近しい親族がいなくても、姪や甥などが法定後見の申し立てのみ行う、ということもあるそうです。
そういった人すら見つからず、本人も申し立てが難しい状態のときには市区町村が申立てをしますが、
それが今は全体の24%にも達していて今後もますます増加見込みだそうです。
4人に1人が申立てくれる親族すらいない、という状況に陥っているんですね。
これは独居の方の増加や、家族関係が希薄になってきていることなどが背景にあります。

現状では後見人の候補となる「専門家」は弁護士、司法書士が法律専門家として、そして社会福祉士が福祉の専門家として、大多数を占めています。
市区町村長申立ての場合には基本的にこの3士業から選ばれるそうです。
ここに社労士も社会保障の専門家として入っていこうと様々な取り組みをしているところです。

なお、練馬区ではこの成年後見人を2人一組で行う仕組みが導入されているそうです。
これにより、それぞれの負担が軽くなることとケア会議や突発的な呼び出しにも対応しやすくなり、
お互いがそれぞれの専門分野を補完しあうことができるということでこれから広がっていくかもしれません。

今回の研修では実際の任意後見契約の内容にまで踏み込んでお話くださり、
より具体的に成年後見について理解ができたと思います。

なかなか時間の捻出が難しくはありますが、私も数年のうちに成年後見人養成講座を受講しようと
あたらめて決意を固めた研修会でした。

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