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嚥下機能改善のきっかけ

これも私がデイサービスの管理者をやっていた頃のお話です。
個人情報保護のため一部脚色しています。

ご病気の後遺症で高次機能障害が残ってしまったM子さん。ご利用開始時にはまだ50代でした。

利用開始前、はじめてお会いした時にはお話もできず頷くだけ。
要介護5。排せつ、入浴、食事、すべて介助が必要。

そんなところからお付き合いが始まりましたが結局それから私が退職する間際に会いに行った時には歩いてそばまで来てくれて、まるで久しぶりに会った同級生かのように最近の出来事をたくさん話してくれました。

M子さんとは本当にたくさんの想い出があるのですが、利用開始後間もなくの頃のお話です。

M子さんは嚥下機能(食べ物を飲み込む事)も低下しており、食事の際にはできるだけ細かく刻んでとろみをつけて提供する事になっていました。
私たちは普段意識せずに食事をしていますが、実は食べ物を噛み、ちょうど良い大きさにまとめて飲み込むという動作は非常に複雑です。
そのため高齢や障害のせいで機能が低下している方に対しては「噛む」「まとめる」という動作を補うためにあらかじめ刻んだり、まとまりやすくとろみをつけてお出しする事があります。

そういった方のための専用の食事「ムース食」や、何やら特殊な酵素?の力で野菜やお肉の繊維を分解済みの「やわらか介護食」など、大変便利なものも開発されていますが、毎食それに頼ると少々お値段がかかります。
ですのでご本人の経済状況や趣味嗜好、嚥下機能レベルに応じて取り入れるかどうかをご検討いただければよいかと思います。

さて、M子さんの場合には年齢もお若く、退院後のご利用でしたのである程度状態が改善していくことも予想されました。
日に日にご自身でできる事が増えていきましたが、お食事については上手く飲み込めなかった場合にむせてしまったり、むせるだけの筋力が無ければそのまま気管に入って窒息や肺炎等のリスクもあり、次のステップへ進んで良いものかどうか決めかねていました。

そんな頃、デイサービスのおやつでかっぱえびせんをお出しする日がありました。いつものようにM子さんには別のゼリーをご用意しかけていた職員ですが、ふと「ね、かっぱえびせんって、口の中で溶けるよね?」と気づきました。
「溶けた後って、とろみ食と同じ感じよね?」

と言う事で、水分補給をしていただいた後にかっぱえびせんを食べてみてもらったところこれが大当たり!

口の中に固いものが入るという、久しく味わっていなかった感覚があり、しかもうまく噛めなくても大丈夫。しばらくすると何とも飲み込みやすい形状に勝手になってくれます。

それからはこのかっぱえびせんで食事の練習をしました。
溶ける→飲み込む から、 噛む→柔らかくなる→飲み込むへのステップアップも早く、噛む時に音が出るのも達成感を刺激します。

私が異動してからも時々訪問に(遊びに)行くと、いつの頃からかほかの方の食事と同じものを召し上がるようになっていました。
一つだけ他の方と違うのは、鏡が食事の横に置かれていたこと。決して極度のナルシストではありません笑。
食べながら時々口の中の食べ物がどんな状態になっているかを確認してから飲み込むためです。

口内の感覚が完全には戻らず、残念ながら味は分からない、とおっしゃっていました。それでも今よりも良くなりたいと、いつも一生懸命に前を向いて努力されている姿勢にとても励まされていました。
あぁ、またお会いしたいな。

色々な方がいるので一概には言えませんが、ステップアップに迷ったら、かっぱえびせんも試してみる価値があるかと思いご紹介させていただきました。
くれぐれも水分補給を忘れずに、溶けるまで待てないせっかちな方には向かないかもしれません。

決してカルビーさんの宣伝ではないのですが、かっぱえびせんの食感はかなり素敵でおやつに多用していました。
でも地元企業の亀田製菓さんの事も応援したいので、おせんべいでしたら『まがりせんべい』や『ソフトサラダ』『ぽたぽた焼き』あたりがサクサクと食べやすいかと思います!こちらもどうぞよろしくお願いします笑。

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