前編はこちらです。
ある日、昼食後の片づけも終わってまったりした時間。
職員「今日のお昼ご飯どうでした?」
といつものように話しかけた。すると、
光代さん「花はどうした?」
職員「お花はここにあります!」
と急いで花瓶を持ってくると、
光代さん「バラ、すみれ草、ね。こんな少なくちゃだめね。今日の生徒はあなた?」
と言葉が次から次へとあふれ出てきた。
驚きと嬉しさで施設内が一気に色めき立って、次から次に話しかける職員や他のご利用者達。それにしっかりと答える光代さん。
私も慌ててご家族に電話した。そして、「今、お話しているんです。是非聞いてください。」と、受話器を光代さんの口元にしばらく向けた。
その間も光代さんは構わずに他の職員と話しまくっている。
私「もしもし、聞こえましたか?」
ご家族「・・・・」
私「あ、もしもし?」
ご家族「・・・あぁ、おばあちゃんのこんな声聞いたの、いつぶりだろう・・・。電話くれてありがとう。」
長年介護されてきた苦労や、いろんなご家族の想いが伝わってきて、こちらまでじーんときてしまった。
光代さんはそれからしゃべり疲れたのかそっと目を瞑り休憩された。
その後目を覚ました光代さんはまた以前のように話さなくなってしまったが、その後も数週間に一度その奇跡の時間は訪れた。
ある時には「お便所行きたいよ」と言ってくれて、「オムツは・・・」と言いかけた私を「何言ってんのよ、赤ちゃんじゃないのよ」とズバッと切り捨て、そしてトイレで排泄をした。
医学的な事はあまり詳しくないので間違っていたらご容赦願いたいが、おそらく光代さんには活動レベルの上がり下がりが元々あったのではないかと思う。
職員やご家族がたくさん話しかけたり手に触れたりする刺激で、そのレベルが急激に上昇する瞬間があった。
そしてその瞬間、もしも一人でいたり周囲が気づかなければ見過ごしてしまうがその瞬間に気付いたから光代さんの声が聞けたり会話ができたりしたのではないかと思っている。
もちろん光代さんと会話ができた事自体も嬉しかったが、ご家族と喜び合えた事、スタッフ全員が喜んでいる事が嬉しかったし、光代さんのおかげで施設全体が一つにまとまったような気がした。
という事で光代さん(仮名)のお話はおしまいです。
介護の知識、技術はもちろん、スタッフの持っている純粋な「この人のために何かしたい」という想いを伸ばしていけるような仕組みづくりを考えながら実践していきたいと考えています。
想いの部分は客観的評価が難しく評価しにくいですが、そこを大事にしてくれる会社を求めているスタッフは実は多いと思うのです。
やりたい介護を認めてくれる会社で働きたい優秀な人材はたくさんいると思うし、そういった人にこそ昇給や賞与で会社からは感謝を伝えられるような、そんな仕組みづくりと運用を頭を捻って考え続けています。
お読みいただきありがとうございました!