久しぶりに、私がデイサービスで働いていた頃のお話です。
何を隠そう、私は全く異業種からの転職でしたので入社当時「介護技術」はゼロからスタートしています。
単発の研修なんかは受講してみたものの、介護福祉士の方から見れば技術はやっぱり素人同然。
そして自分でもそれを自覚していたため、ベテラン女性パートスタッフからの「私は大きな男性の介助は無理よ」の声に悩みました。
これも現場では割と良くある話かと思います。
その当時、もともと職人をされていて身長が180センチ近くある要介護5の男性ご利用者がいらっしゃったのですが、その方に車いすから椅子等へ移っていただくための介助方法について模索していました。
パートスタッフのお姉さま方は「私達には無理。男性スタッフにお願いしたい」と言い、男性スタッフは「僕だって腰に来てる」と言い、だったら私が、と言ってもいつもできるわけでもなく。
ちなみに私は女性パートの方々よりも体格的に恵まれて(?)いたことと、年齢的にもまだ体力もあったので、多少の力技で辛うじて対応できていました。
そんな時、地方でマネージャーをしていたMさんが私が管理者を務める事業所へ視察に来る事に。
Mマネージャーは身長150センチも無い小柄な女性。
とても明るく、いつも周囲を気遣って、でも締めるべきところはビシッと決める、とても素敵なマネージャーさんでした。
そして、介護の現場で長年経験を積んでいる介護福祉士さんでもありました。
そんなMマネージャーに、事業所で起こっている事について伝えてみるとすぐに「あの方ですかね?」と言って男性利用者様の元へ。
そしていつもの明るい調子で話しかけ、心のシャッターを突破。
そしてMマネージャーが男性利用者様の体に手を回した次の瞬間、思いました。
『地球の重力どこ行った??』
軽々とご利用者様は立ち上がり、いつの間にか椅子へと座っていました。
Mマネージャーのあまりに華麗な、流れるような技術を間近で見て、「これがプロだ」と感激したのを覚えています。
そして、Mマネージャーの動作が流れるような動きだったのと同時に、ご利用者にもいつもより負担が無いように思えました。
金八先生の「人という字は人と人が支え合ってできている」という事を思い出してしまうほど、まさに介助者とご利用者が支え合って協力し合って移動したように見えたのです。
大変に小柄なMマネージャーがあまりにも易々と目の前で実演してくれた事で、現場の雰囲気が変わりました。
「Mさんよりは私の方が身長もあるし、できない事無いかも!」
と、積極的にMマネージャーにコツを聞いてくれ、そんなこんなで女性陣に囲まれて練習台を引き受けてくれたご利用者もいつもより嬉しそう。
その後私も色々な人と出会い、何年経っても変わらずに、より負担の無い「移乗方法」や「起き上がり介助」についてチャレンジし続けている人がいる事も知り、研修にも参加させていただきました。
ボディメカニクス、てこの原理、と言葉で聞いても、やはり頭で分かるのとできるのは別問題。
頭で理解した上で実践を積んで自分のものにしている介護職員さんを見ると、「かっこいいなぁ」と憧れてしまいます。
介護の仕事って、本当に奥が深いんですよね。
こんなに楽しくてやりがいがあってかっこいい仕事、もっとやりたい人が増えてくれるように何か行動していかなければ!と気持ちばかりが焦ってしまう今日この頃です。