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人事評価制度の失敗(後半)

前半はこちらです。

【改善その②】
管理者任せでの評価がうまくないんじゃないかと、担当マネージャーが全事業所を回って職員と面談するという事にしてみました。
当時関東のマネージャーは3名いましたが、週に1度は集まってもらっていましたので認識のずれも少なく済むだろうということで試したのです。

結果は、完全にとはいかないものの今までの失敗を目の当たりにしてきたマネージャーですからなかなかうまく評価ができたのではないかと思われました。

ところが思わぬ弊害が起こります。マネージャーが直接スタッフ面談を行い、スタッフを評価するという事で管理者の立場が悪くなってしまいました。
スタッフが管理者を軽視してしまったり、反対に現場で判断ができない管理者が増えてきてしまったのです。

冷静に考えれば当然の結果ですよね。当時の管理者には悪い事をしたと思っています。ごめんなさい。

【改善その③】
誰かの主観に頼る事なく評価をする仕組みの一つとして、事業所の売上に応じてその事業所全体の賞与額を決めるという事も試してみました。
売上はご利用いただいてご満足いただいた対価ですから、売上が上がっている事業所=スタッフが頑張っている事業所、としたわけです。

これ、一般的な飲食店や小売店だったら特に違和感もないと思うのですが、福祉でやると大やけどします。
「会社はご利用者をお金としてしか見ていない」
「営業がうまい管理者がいるだけじゃないか」
「どうせ会社の上の人達はお金の事しか考えていない」
こんな不満が噴出します。怖かったです。


【改善その④】
前回のイメージを払拭しようと、大々的な変更をします。
私たちは介護の会社だ!という事をもう一度ちゃんと考えようという事でした。


管理者・相談員はともかく、介護スタッフの評価はやはり現場でいかにご利用者に良いサービスを提供できているか否かです。
「良いサービス」というのは入浴介助が早いとかではなくて、ちゃんとご利用者の立場に立って声をかけているか、共に負担の少ない身体介助ができているか、そういうところを評価しましょう、という事になりました。

という事で会議室にベッド・車いす・家具などの必要な物を運び込み、食事、入浴を再現してもらう事にしました。介護福祉士の実技試験のようなイメージです。受けた事はないけども。

なおかつ、会社として大事にしているご利用者目線のお声がけだとか、生活歴に沿った気遣いだとか、そういったことも汲み取れるように、事前情報をできるだけ多く伝えてご利用者役のマネージャーへ対して介護をしてもらいました。
これ、だいぶ良いと思ったんですけどね。
一度ついたマイナスイメージは根強かった。。。

評価を担当していた運営責任者がある介護スタッフさんからこう言われたそうです。
「私、利用者さんに喜んでもらいたくてやってるんです。お給料上げて欲しくてやってるんじゃありません!」
完全に悪い大人認定をされてしまっていたようだと、人の良い運営責任者は嘆いていました・・・。
本当は誰よりも介護の事を考えている素晴らしい責任者だったのに。あぁ。。。

というところで数々の失敗を繰り返してきました。
評価制度を作る事で何をしたいのか、この根本的な意識統一ができていなかったのが元凶なような気がしています。

そもそも人事評価制度を作ろうと思ったきっかけが「介護職員処遇改善加算」の取得要件に「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを導入する場合は、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されている「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みの導入が必要です。」とあったからで、すぐに評価をしてその結果に応じて昇給させなければならないという大いなる勘違いがあったのです。

そもそも人事評価制度を職員の給料を決めるためのものだという捉え方が危険です。
これをまず、人材育成のためのものであると捉えなおす必要があります。
そう考える事で、例えば数回は評価はするけれども給与への反映はせずに、評価結果の満足度調査をしてデータを取っていく事にしても良いわけです。
というか、そうすれば良かったと今更ながら思っています。

評価をする事で強み、弱みを見つけて、成長のきっかけにする。人が成長すれば会社も成長します。
そのための人材育成であり、そのための評価制度なのです。

ですのでこれから導入する会社さんには、処遇改善加算、特定加算の取得ができるような評価制度を、と言われた際の最低限度の簡単な仕組みを提案し、その間にしっかりと評価制度を試してスタッフの納得感あるものを醸成してから使い始めるよう提案していきたいと思っています。

社員に求める事は各会社が何を目指しているかによって大きく異なります。
厚労省の評価シートも大変に素晴らしいものではありますが、是非会社の理念を反映した評価制度を運用することが発展につながるものと考えています。
お手伝いが必要でしたらぜひお気軽にお問合せください。

という事でなかなかできない度重なる失敗談でした。あの頃私たちも若かった!

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