先日ある介護事業者さんから「会社で費用を払って資格を取ってもらったのに、すぐに辞めちゃった」
というお話を伺いました。
うちの会社は、〇年以内に退社する場合にはお金を返してもらうようにしているから大丈夫!
と思った社長さん、本当に大丈夫ですか??
労働基準法第十六条(賠償予定の禁止)では次のように定められています。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
「辞めるんだったらお金を返してね」、はつまり「労働契約を果たさないのであれば違約金を払ってね」
という事になり、あらかじめ違約金を定めたものとして16条違反になる可能性が大いにあるのです。
ではこれを回避するためにはどうしたら良いか。
ひとつの方法として、お金を出してあげるけどやめるんだったら払ってね、ではなく、
お金を貸与しますよ、という金銭消費賃貸契約を個別に結んだ上で、
〇年働いたら返済しなくて良いとする逆の発想での契約締結です。
但しそうすれば必ず大丈夫かといえばそんな事は無く、
過去の判例では、下記の要素を総合的に考慮して判断されています。
①労働契約と区別した研修に関する金銭消費貸借契約の有無
②研修後の勤続期間の長短(長いほど違法になりやすい。目安は3年もしくは5年)
③返還免除の基準の明確さ
④返還額・方式の合理性
⑤研修の業務性の有無
⑥本人にとっての利益の程度、自由意志の有無
このあたりが大切になるようです。
ちなみに業務命令で資格取得をさせるような場合には、本人の自由意志が存在しませんので
当然に会社が負担すべきものとなります。
金銭消費賃貸契約なので、ちゃんと返してもらう契約でももちろん大丈夫です。
会社にもスタッフにも使いやすい制度設計は会社様の実情毎に違いますので
個別でご相談いただければ一緒に考えます。
困ったときにはご相談くださいね。